以下のstudio TOFUさんのブログ記事を読み、呼ばれたような気がしましたので勝手ながらヒートプレスについて語ります。
入門者・初心者でも比較的に簡単にできるヒートプレスのやり方・方法の解説です。
ヒートプレスとは?
1980年代のコミックボンボン誌で、プラモ狂四郎やヒゲのプラモ怪人さんのSFプラモマガジンを愛読されていた方なら、ヒートプレスは必修の技法だったと思います。
ヒートプレスとは、模型工作の世界では、樹脂版を熱して(ヒート)軟化させ、型に押し付けて(プレス)加工する技法のことです。
透明な0.3mmの塩化ビニール板を使う
初心者がヒートプレスを成功させるコツは、透明な薄い塩化ビニール樹脂(PVC)の板を使うことでしょう。
薄い塩ビ板については、別ブログでも言及しています。
透明な薄い塩ビ板を推奨する理由
薄手の塩ビ板をお薦めする理由は以下の4つです。
- 塩ビは比較的低温で変形しやすい
- 透明だと型が隠れないので加工しやすい
- 薄いと熱を通しやすい
- 薄いほうが形がくっきりと出しやすい
100均などにて薄い塩ビ(PVC)板を探す場合は、クレジットカードやキャッシュカードが役に立ちます。カード類は規格により厚みが0.76mmと決まっています。キャッシュカードと厚みを比較して、同じようであれば0.7~0.8mmくらい。カードよりも少し厚ければ約1mm。カードの半分くらいであれば、厚さは0.3~0.4mmくらいと目安にできます。
PET板はNG
PETボトルの素材として有名なPET(ポリエチレンテレフタラート)も、透明な樹脂素材として広く使われていますね。
しかしながら、PET樹脂は耐熱温度が高いので熱加工は難しいです。(A-PET素材の)PET板は加熱すると白濁・白化するので、透明物の工作はさらに難しいでしょう。(PET-Gの樹脂板が入手できる方は、白濁の心配は少ないと思います。)
耐熱性の高い素材は、ヒートプレス向きではありません。
型はテーパー状にする
これはヒートプレスに限りませんが、型はテーパー状にしてください。テーパーについての説明は、以下の別ブログに書いています。
また、最初は簡単な形状で厚みの薄い物からヒートプレスするとよいでしょうか。厚みのある物は、難易度が高いです。
型は画用紙で作る
今回は例として、透明な丸いミニチュア食器・容器を作ってみましょう。
コンパスカッターを使って、画用紙を丸く切り出します。
切った画用紙を重ねて3段階状の原型を作りましょう。
接着は木工ボンドでOKです。断面図は以下のようになります。
合計で9枚の画用紙を重ねています。
できあがった原型を粘土状シリコーンで型取りします。
原型に画用紙を使う理由は、工作が簡単で意外に熱に耐えてくれる素材だからです。
作業は木製かMDF製の板の上で
私がヒートプレスを行うテーブルは、天然木のテーブルです。ガラス製のテーブルや、木目調の塩ビシートが貼ってあるテーブルなどでは、この方法のヒートプレスは避けてください。加熱によりガラスが割れたり、塩ビシートがはがれたりする危険性があります。
原型を中央に配置して、その上に透明な塩ビ板を置きます。
塩ビ板の四隅はマスキングテープで固定します。
加熱にはエンボスヒーターを使う
塩ビ板を熱する必要があります。加熱にはエンボスヒーターが便利です。
より高い熱風がでるドライヤーのような道具です。200℃くらいの熱風が出ます。
もともとは、エンボスアート用の加熱装置(ヒートツール)ですが、硬化前のレジンの気泡を(加熱によって)消したり、熱で縮むプラバン工作にも活用できたりしますので、買って損のない工作ツールの1つでしょう。
予算がある方は、温度調整機能付きのエンボスヒーターもよいと思いますが、ヒートプレス用なら、200~250℃の熱風が出る機種なら、何でもOKです。
ちなみに、もっと高熱を発するヒートガンというツールもありますが、ミニチュア工作で使う機会は少ないでしょう。
加熱時には換気やマスクは必須
火であぶるよりもエンボスヒーターを使うほうが、より安全性が高いと思います。しかし、プラスチック類は熱すると有毒なガスが発生します。周囲の状況や換気にご注意ください。マスクやゴーグルなども着用されたほうがよいでしょう。やけど防止として、皮手袋かゴム手袋の着用もおすすめします。
加熱のコツは…?
固定した塩ビ板を、エンボスヒーターの熱風で加熱しましょう。
塩ビ板を加熱するコツは、ムラなく加熱することです。
最初は塩ビ板の中心部分を加熱しがちです。
中心だけでなく、周囲も加熱させる意識をもって、塩ビ板全体に熱が通るようにしましょう。
加熱の加減は、いろいろと試してみてください。加熱不足もヒートプレス失敗の主原因です。
エンボスヒーターであれば、塩ビ板を必要以上に加熱し過ぎないので、かなり初心者向きでしょう。焦がす心配もありませんし、やり直しも簡単です。
加熱後はすぐにプレス!
加熱が完了したら、すばやくシリコーン型を押し付けて、プレスします。
しばらく押し付けたら樹脂版が冷えてくるので、シリコーン型をはずします。
これでヒートプレスは完了です。
最後に
最終的にハサミやヤスリで整形すると、透明なミニチュア皿の完成です。
今回のやり方と細かい部分は違うのですが、ヒートプレス作業の動画もアップしています。
久しぶりにYouTubeに動画を投稿しました。ひたすらヒートプレスをするだけの作業動画です。 #ミニチュア #ヒートプレス https://t.co/oYneW34n4T
— ミニもの(ミニチュア製作) (@mini_mono_net) April 16, 2020