前回の記事で透明樹脂が黄変するのは、空気中の酸素が主原因ではないか?と書きました。いわゆる『酸化』と呼ばれる反応です。
前回は黄変のメカニズムと、その予防・対策。今回は黄変したレジンを元に戻す方法について、実際に行った実験レポートを書きます。
上記は、今から5年前の2011年に作製したエポキシレジンによる作品。
日新レジン社の『クリスタルレジン』という商品名のエポキシレジンを使用しました。製作時は、きれいな透明だったのですが、見事に黄変しています。
ちなみに、あまり太陽光の射さない倉庫内の机の引き出しに収納していました。
さて、中学校の理科の授業を思い出してほしいのですが、酸素を得る反応を『酸化』と呼び、逆に、酸素を失う反応を『還元』と呼びます。(高校の化学では、もう少し複雑なメカニズムを学びますけど、とりあえず酸素のやり取りだけでも憶えて頂ければ…。)
酸素と結びついて酸化した透明レジンが黄変したと仮定すると、その酸素との結びつきを解いて(還元して)しまえば、黄変は軽減できるのでは…?と考えました。
では、実験のスタートです。
↑実験前・実験後の成果を比較するため、レジンパーツを分割しました。
酸化した物を還元すると考えたときに使う薬品として、まず連想したのが『過酸化水素水』です。過酸化水素水は、消毒液のオキシドールとして有名でしょう。
薬局で購入できるのですが、もっと手軽にスーパーマーケットなどで購入できる過酸化水素水があります。
衣類用の漂白剤として知られている『ワイドハイターEXパワー』です。
↑成分を見ると『過酸化水素』とあります。今回は、これを還元剤として利用します。
密閉容器を準備。容器にワイドハイター(過酸化水素水)をそそぎ、分割した片方のパーツを入れて容器を密閉しました。還元反応を促進させるために、塗装の乾燥専用に使っている食器乾燥機の電源を入れ、乾燥機へ容器を投入。
ちなみに、冬場の実験でしたので食器乾燥機をタオルケットでくるみ、保温性を高めました。(気温が高ければ、タオルケットは不要だと思います。)
2日間ほど過酸化水素水(ワイドハイター)につけて、取り出した成果が以下です。
完全に元の透明さを取り戻した訳ではありませんが、過酸化水素水につけなかった左側のパーツと比較すると、黄変が緩和されて透明度が少し復活しています。
なお、理論上、酸素と反応した過酸化水素は水と酸素になりますね。ワイドハイターの場合、他の成分もあるので、完全に水になる訳ではありませんが…。
実は常温でも試したのですが、その場合は黄変が取れませんでした。還元反応を高めるには、気温が高くないとダメなのかもしれません。
今回の実験でわかったことは、レジンの黄変の原因は、やはり酸素(酸化)も大きな要因ということでしょう。還元反応で再透明化できたことが、その証左です。